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存在感のある資産形成

92年は、昨年と同じように経済担当の閣僚がそろいもそろって「最悪期は過ぎた。 消費者はそろそろ我慢疲れしてモノを買い始めるはずだ」と連呼していた頃でした。
私が当時勤めていた会社でも、日銀出身の天下り幹部が日銀から仕入れてきた情報と称して同じような見通しを連呼していました。 これだけ誤った景気判断を続けたにもかかわらず、日銀職員もこの天下り幹部もおとがめなしに給料をもらえた良い時代でした。
しかし、日本人にも我慢の限界というものがありますから、今年は彼らにとってそう都合良くはいかないでしょう。 今年の不動産市場のデフレ要因をあげると次のようになります。
昨年後半からの怒涛のようなアジア通貨危機が、香港、韓国、そしておそらく中国にまで及ぶことから、日本の商業地の潜在的な担い手として期待されてきたアジアの投資家の投資態度も相当悪化するでしょう。 80年代後半に、必死になってアメリカの不動産を買い漁ってきたジャパンマネーが、自国の具合が悪化して一斉に引きあげたように、アジア諸国も景気後退と金融引き締めという同じような国内事情によって、日本からの撤退を余儀なくされるでしょう。
もともとアジアの投資家の逃げ足は早いのです。 新たな値下げと供給圧力昨年建設大男声で大幅な値下げ販売に踏み切った住都公団のビヘイビアが、ボディーブローのように住宅価格に影響し始めています。
大手マンションメーカー大京は、塩漬けにしていた在庫のファィャーセールスに本腰を入れ始めましたし、他のデベロッパーも基本的にはたたき売り競争に参入せざるをえなくなるでしょう。 中古マンションも新築マンションも値引きは当たり前という状態になりそうです。

92年にも、売れ残り在庫を抱えたデベロッパーは在庫の叩き売りをするか賃貸にまわすかのどちらかの選択を迫られたわけですが、それがマンション相場のみならず、賃料相場まで押し下げるというデフレスパイラルを経験しています。 今回も基本的には同じような手しか打てないでしょう。
(3)大型倒産と信用不安11昨年1年間の企業倒産の負債総額は12兆円を超え、戦後最悪となりました。 ゼネコンをはじめ、デベロッパー、銀行、生保、証券各社の経営破綻はますます表面化していくでしょうから、今年はさらに最悪記録を更新するでしょう。
さらに問題なのは、倒産した会社の債務超過額が決算上の公表数字とあまりにもかけ離れていることです。 昨年倒産したT建設の実際の債務超過は770億円、大都工業は952億円、TもYもほぼ間違いなく債務超過でしょう。
時価換算した会社の資産価値が簿価の半分以下になるような仕組み自体が、資産デフレを呼び起こす根本的な原因になっているのです。 銀行が資産減らしに躍起になっているのはもちろんのこと、大手デベロッパーまでが資産圧縮を進めだしました。
資産調達に難はないと思われてきた大手でも、以前のような先行取得はやめて資産圧縮を進めると宣言しています。 本来であればそういった売り物を吸収すべきデベロッパーが、逆に売り手にまわるわけですから、これも相当のデフレ要因です。

しかし、前述したアメリカのノンバンクのように、質の良い資産であればむしろ積極的に買い集めたいと思っている投資家や、新しいタイプの金融プレーヤー、それに一部の外国人プレーヤーがいることも事実ですから、あえてここで不動産投資する人にはこうアドバイスしたいと思います。 不動産投資の判断基準は、不動産を保有している間のインカムゲインと、これだけデフレ要因がはっきりしているうちは、不動産に投資するのを手控えるしかありません。
昨年日本の銀行株が、外国人投資家から大量にカラ売りされたということは、外国人もデフレと読んでいるからです。 おまけにすべての銀行が不動産の先安感を捨てきれていないわけですから、ここに買い向かっていくにはかなりの勇気が必要です。
(5)クレジットクランチ(貸し渋り)銀行がこれだけ融資をしなくなっては、少なくても商業不動産は動かないでしょう。 資金使途が事業用不動産の購入資金というのでは、まったくといっていいほど銀行は融資をしてくれません。
不動産を売るのも買うのも銀行次第というのでは、銀行が不動産に無知なうちはデフレが続くということです。 キャピタルゲインをプラスして現在価値に割り引いた価格が、投資額に比べて合理的かどうかということです。
したがって、投資期間終了後の物件価値を、投資の簿価よりも安く設定して投資分析を行えば、仮にキャピタルロスが発生してもそれなりの合理性は得られるでしょう。 それでも投資価値があると判断できれば投資に踏み切るべきです。
不動産投資の総合利回りは、REITを例にすれば、(期末時価十期中配当金一期首時価)・一.期首時価で求められ、配当利回りは配当金・一.時価で求められます。 96年は、この配当利回りが6%、総合利回りが35%と抜群に良いパフォーマンスをあげたわけですが、とりあえずこの配当利回りの部分をキープできる投資を心がけることです。
ちなみに、REITが構造的に高配当だという点を割り引いても、配当利回りはここ数年6%から7%と安定しています。 キャピタルロスがどれぐらい発生するのかを織り込む前に、最低でもこれぐらいの利回りを確保しておくことです。
アメリカはマーケットの状態によって多少のぶれはありますが、おおむね10%程度のキャップレートをキープしています。 また、ドイツのキャップレートも、よほどの都心の一等地を除いては10%ぐらいと認識されています。
つまり、金利水準の違いこそあれ基本的な投資利回りを10%程度にキープしておくことがグローバルスタンダードだと見なすことができるのです。 投資家が日米独どの国に投資するかを考えた場合、キャップレートの段階で10%未満は失格ということになります。
いずれにしても、デフレの時には配当利回りに相当するインカムゲインに余裕を持たせた不動産投資を心がけることです。 いままさに、世界中で急激な価値観の変革が始まろうとしています。
これからは、会社であれ個人であれ、また不動産であれ、誰もがわかる合理的な価値がいくらなのかで評価されるようになるでしょう。 会社であればいくらの経営資産を持っているのか、個人であればその才能はいくらで売れるのか、そして不動産であれば、まさにいくらの収益が上げられるのかが最大の関心事になっていくでしょう。

そんな時代に、これらの資産価値(アセットバリュー)を計る方法が全くないとしたら、いくら魅力的な資産でも見向きもされないでしょう。 しかも、ここでいうバリューとは暖昧で抽象的なものではなく、具体的かつ客観的な時価(マーケットバリュー)でなくてはいけません。
ここで何度も指摘した適正価格(フェアーバリュー)も、実はこの適正時価の概念が定まらなければ定着するのは困難です。 不動産投資においても、日本が最も遅れているのがこの不動産の時価の概念です。
誰もがはっきりと認識できる時価が定着しない限り、土地は永遠にカラ売りされ、底値が把握できないままダラダラと下がり続ける展開になります。 不動産のような特殊な価値判断を要する資産ほど、その収益性に根づいたフェアバリューの目処が必要なのです。

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